ピアノ教師という仕事
ピアノ教師という仕事は、世間一般ではどう見られているのだろう。
今回、発表会の会場でアンケートを配らせてもらい、25人の貴重な
回答をいただいた中に、次のような記述があった。
「ローカル(地方)で地味な活動であっても大事な仕事と思う。」
恐らく男性の字で書かれたこの言葉を見た時、私は気が引き締まる
思いがした。この仕事をこんなふうに言葉で評価してもらったことは
今まで、ない。
自分では子どもの成長にとって音楽がいかに大切か、そう空気と水と
食べものと同じくらい大切だと思って教えてきた。音楽の入り口は
いろいろあるにせよ、ピアノという楽器は最もポピュラーな入り口だと
いうことを今回の発表会でも感じた。だから自分の仕事に誇りを持つ
と同時に責任も感じている。
だからこそ、ピアノ教師という職種が職業として成り立ち、つまり
これだけで食べていける職業であるべきだと、後進の為にも、ピアノで
食べていける仕事をしよう、と心に決めてやってきた。
若い頃、義母に赤ん坊だった我が子を預けてレッスンしていた。
義母が「理美さんお仕事だから」というと、義母の友人のおばちゃんは
「お仕事ってピアノ教えてるだけでしょう?」と言った・・・。
そのおばちゃんはコーラスもしているれっきとした音楽好きの方である。
その人からしてそういう発言が飛び出すのだ。「主婦の片手間」なんて
思われていることもあるかもしれない。
何度となく苦い思いをしながらも、二女が生まれた時2年だけ休業して
あとは休まず続けてきた。子どもらが幼い頃から晩ごはんは作って置いておき、
「食べときや~」と言って一緒にご飯を食べれない時も多かった。
子育てとの両立で悩み、「お母さんピアノ教えるのやめようかな、」と
ポツリと言ったら「やめたらあかん!」ときっぱり言ってくれたのは
小学校低学年だった長女だった。
そんなこんなでやっとここまできたわけだ。近ごろは寝ても覚めても、と
言ってはおおげさだけれど、いつも生徒たちのことを考えてしまっている
自分に気づく。あの子にはこんどあれを使ったらいいかな、この子には
こんなアプローチがいいかな。町に出かけた時は100枚目のプレゼントを
その子の顔を思い浮かべながら選び、かわいいシールを見かけたら思わず
買ってしまう。
初めての評価にますますやる気が出てきた。今度は本を書こうと計画中。